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【ライブレポ】RAINBOW2000 HAKUSAN'98 -新月-[1998.08.22~08.23]

この記事に掲載する内容は、1998年に石川県の白山瀬名高原スキー場で行われたRAINBOW2000のレポートであり、その当時に書いたものの再編版です。

私が20歳前後のころに書いた稚拙な文章ではありますが、当時の熱や思いが伝わるようその当時に書いた文をなるべくそのままに、間違っていたりあまりに青臭い部分は修正して掲載します。

RAIOBOW2000は1996年に始まり1999年に幕を閉じるまで毎年夏に開催されていた「テクノ」のオールナイト野外フェス。あるいは野外レイヴ。当時も今もこのフェスの音楽を表現する言葉としてテクノという言葉を用いるのは妥当ではないかもしれません。しかし私はあえてそう呼びます。

フジロックフェスティバルに先んじること1年の1996年、富士山の裾野に16,000人を動員してスタートしたRAINBOW2000。今や伝説ともなっているUnderworldのライブを始めとして、当時の日本における「テクノ」が詰まったラインナップでした。

翌1997年は富士山と白山の二箇所開催、1998年は白山のみでの開催、そして1999年も白山のみで開催されたもののそれが最後となりました。しかしその後もMETAMORPHOSEへその精神は引き継がれていきます。

ここでは1998年に白山で開催された3回目のRAINBOW2000のレポートを掲載します。開催日はお盆を過ぎた8月22日~23日。ヘッドライナーはジェフ・ミルズでした。

RAINBOW2000 HAKUSAN’98 -新月-[1998.08.22~08.23]

大阪から6時間かけて会場に到着

8月22日午前9時。

予定通り地元大阪を出発。天候は快晴。体調は良好。いやがおうにも気分が高まってくる。吹田ICから名神にのり、そのまま北陸自動車道・加賀ICまで直行。

途中京都の辺りで渋滞はしたものの、迷うことなく予定通りの15時ぐらいに会場である石川県尾口村・白山瀬名高原スキー場に到着。

大阪から遠く離れた尾口村でも相変わらず天気は快晴。やはり大阪より幾分風が涼しくて心地よい。

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入り口でチケットと引き替えに、ゴミ袋、プログラム、スキー場のゴンドラ乗車券等を渡される。入り口に近接するテクニクスガーデンでは早くも盛り上がりをみせていた(このテクニクスガーデンでは閉演まぎわの23日の昼まで盛り上がりっぱなしだった)。

ゴンドラで山頂へ

まだメインステージRAINBOW CIRCLEでは何も始まっていないので、入り口で渡されたゴンドラ券を使ってゴンドラで山頂のARCADIA GARDENへ行くことにする。

密室で蒸し暑いゴンドラに乗って山深い谷間を揺られること約6分、標高約1000メートル近い標高の頂上に到着。ゴンドラの扉が開くと同時に心地よい涼しい空気が入ってきた。

それもそのはず、一気に700メートルも上ってきたらしい。これはエアコンいらずである。ゴンドラの駅を出るとそこに広がる景色はまさに天上界だった。

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360゜のパノラマに広がるのは湖と山と空だけ。地球は丸いんだなと実感できる景色。西日に照らされた湖面が銀色に輝いてキラキラした光を反射している。ついにRAINBOW2000にやってきたんだなとしみじみ思う。

山頂のレストハウスの外に設置されたスピーカーから心地いい音が流れている。そこで踊る妙な外人(おららくラリっている)。一方、レストハウスのなかに作られたDJブースの中ではHi-goさんが回している。が、フロアでは誰も踊っていない。でもなんだかいい雰囲気。

窓際にあるイスに座って一休み。窓から見える山々が妙に神々しく見えた。結局、日が傾きだした夕方まで2時間ほど、山頂で心地よく過ごす。

DUB SQUAD

18時前頃、再びゴンドラに揺られてふもとに降りてくると、すでにRAINBOW CIRCLEでは踊ってる人が多数。そろそろ空も暗くなってきた。

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ステージ横のスペースにビニールシートを敷いて場所を確保。しばらくそこで休憩し、DUB SQUADのライブに備える。

SAWAのDJが終わり、予定より30分ほど遅れてDUB SQUADのライブが始まった。ハッピー系のSAWAのDJから一気にダークで重いなダブのビートに。ステージ脇に設置された4つの巨大アンプから流れるベースの低音がビリビリと空気をふるわせる。かすかに地面も揺れる。

低音に絡まるように走るブレイクビーツ。文句ナシにかっこいい。次第にBPMの速い曲にチェンジしてゆき明るい曲調にかわっていく。

そしてアナログでシングルカットされた曲「madness」の澄んだ空気のようなイントロが流れ出した。「madness、madness、madness...」というサンプルを合図にガツンと全身を打たれるようなビートが襲ってくる。この曲が流れている時間が俺のなかでは今回のRAINBOW2000で最高に気持ちいい時間でした。ほんとにメチャクチャ気持ちよかった。

今年、日本・ヨーロッパで1st.CDアルバムを発表したばかりのこのバンド(ユニットとかではなくあえてバンドと表現したいです)、今後の日本のダンス・ロックシーンを率先していく存在になっていくことを期待します。 

 クラナカ+1945

その後、ごく自然な流れでクラナカ+1945のDJ+ライブに移行する。

DJ+ライブってプログラムに表記してあったので、どういうことなのかな?って思ってたら、ターンテーブル×4+トランペットなど生楽器等を重ねるやりかただった。コレもかっこよかった。やっぱしDrum’n Bassもいいなと再確認できた。途中でそろそろ腹が減ってきたので、メシを食いに行く。どれもバカ高かったのでかま揚げを一本だけ食ってその場は我慢。

YOJI BIOMEHANIKA

休憩がてら1時間ほどフリーマーケットや売店、チルアウトルームなどを一通り見回って戻ってくるとRAINBOW CIRCLEが異常に盛り上がってる!中村直のキャンセルによって、予定よりかなり早くYOJI BIOMEHANIKAのDJが始まったみたいだ。

この人のことも、彼がプレイしているニューエナジーってジャンルの音楽もよく知らなかったので試しに行ってみると、コレはもう踊るしかない!という感じだった。この人には”人を踊らせる”という天性の才能があるように思う。でもニューエナジーってジャンルはどどうも好きになれないが。結局この人のプレイが今回のRAINBOW全体を通して一番盛り上がってたのではないでしょうか?三時間のロングプレイに関わらず、RAINBOW CIRCLEは人でいっぱいだった。

山の寒さと満天の星空

その後、深夜から始まるフルークのライブとジェフ・ミルズのDJのために再びしばしの休憩。

朝早かったので少し寝ようと思ったが、寒くてとても寝ちゃいられない。夜になってから風もきつくなってきた。ウィンドブレーカーの上にレインコートを着てもまだ寒い。仕方なく友達に寝袋を借りて、なんとか寒さを防げた。

仰向けになって寝ころんで空を見上げると、いつの間にやら満天の星空。星の数が大阪より格段に多く見える。凄くきれいだ。生まれて今までみたことなかった天の川がボヤーッと見える。そして時間を追うごとに空を薄く覆っていたモヤが晴れてきて、星の数が次第に増してゆく。よく見ればしょっちゅう流れ星も見える。素直に感動できた。

しかし視線を下げると、そこには何千人もの人が機械的なエレクトリックミュージックにあわせて踊る光景が。大自然とテクノロジーの対比が異常ではあったが何故か感動的だった。そして十分に非日常的だった。コレを感じるのがフェスティバルの醍醐味なんだろう。ホントに不思議な空間が創り出されていた。ブラックライトで光る妙なオブジェも暗闇に映えて不思議空間を演出してたし。

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Ether Vibe(細野晴臣)

長かったYOJI BIOMEHANIKAのプレイが終わり細野晴臣のEther Vibeのライブが静かに始まる。

先程までのYOJI BIOMEHANIKAのプレイとは対称的な、民族楽器を使ったトライバルな音楽。一気に会場の雰囲気が変わった。休憩していたので、一度もステージを見ずに寝ころんだまま聴いたが、まるで大地から湧き出すかのような深い音楽だった。低音で地面がブーンと震えていた。

存分に会場の空気を柔らかくしてくれたEther Vibeのライブが終わる0時半ごろ、ステージから”ララララ~、行かなくちゃ♪”と森高千里の歌声が聞こえてきた。もしや!と思って起きあがって見に行くと、まんまと騙されたよ。次のDJがレコードかけてるだけだったよ。がっくし。

FLUKE

午前1時頃、FLUKEのライブのための準備を始める。

軽くメシも食った(手打ち白山そば 500円ナリ)。蛍光ライト、トーマスのお面などの小道具をそろえて準備万端(いったいなにしにいくんだか)。最前列を確保するため、早めにステージ前へ。

KIHIRA NAOKIのDJが終わり、FLUKEの「HITTEN MOON」が流れ始める.。いよいよFLUKEのライブの始まりだ。

がしかし、いつまでたってもステージ上には誰ひとり現れない。なんだなんだ?じらし作戦か?曲の終わりごろになってようやくメンバーのひとりが現れ、次の曲のイントロを演奏し始めた。

しばらくしてフロントメンバーの二人、ジョナサンとレイチェルが姿を現す。その瞬間からオーディエンスの視線はレイチェルの一挙一動に釘付けになった。この人、見た目も凄いが動きも凄い。なんか妙に腹筋たくましいし。目つきも恐い。変なダンスで客を煽る。かなり圧倒された。睨まれると固まってしまった。予想以上にマッドなパフォーマンスがキていた。

「ATOM BOMB」や「ABSURD」の代表曲も披露し、おそらく新曲と思われる曲も多数やってくれた。新曲、4つ打ちが多くてかなりいい感じだった。ジョナサンのボーカルもかっこよかった。大興奮のうちに、わずか1時間のライブはあっという間に終わった。大満足。 

 Jeff Mills

午前2時半ごろ、FLUKEがステージから去った直後、奥にかまえたDJブースにスポットライトがあたる、と同時に暗闇からジェフ・ミルズがスーッと現れた。

この登場シーンはかなりかっこよかった。鳥肌が立った。直後、おもむろにDJプレイが始まる。FLUKEのライブの疲れをおして、しばらく前列で見てみることにした。....

10分ほどたっただろうか。凄い、凄すぎる!なんなんだあの手さばきは?全く無駄がない。ターンテーブル3台+TR-909をキビキビ操る。もう何をやっているのか分からないくらいスゴイ。コレがターンテーブルの魔術師といわれるプレイか!と思って興奮した。圧倒されつつもさすがにちょっと疲れてきたので、1時間ほど踊っていったん寝て休むことにした。

目が覚めるとすでに夜が明けていた。時計を見ると午前5時。

まだジェフ・ミルズが回している。明るくなったのでオーディエンス全体が見渡せるようになった。朝の柔らかい日差しの中、かなりの密度で何千人もの人々が踊っていた。これはさすがにかなり異常な光景に見えた。まったく現実感のない風景。これぞフェスティバル。

たった1時間の睡眠で嘘のように疲れがとれたので、迷わずその群衆の中に入って行く。ジェフ・ミルズは、もうほとんどの909の 音だけでプレイしてるような感じだ。

5時半ごろ、DJブースにQ-HEYが姿をあらわす。そして3時間に及ぶジェフ・ミルズのロングプレイが幕を閉じた。ほんとにいいものが見れた。

Q-HEY

ジェフがブースを去ると同時に、人の密度が急激に減った。みんなジェフの出待ちにいったらしい。周りがガラガラになった。踊りやすくて好都合である。

Q-HEYがどんな曲をかけていたかはもうあんまり思い出せないが、すでにナチュラルハイになっててとても気分が良かった。変に幸せな気分。体はもうボロボロだったけど。

たしか卓球の「ポリネイジア」がかかってた。三枚がけだったのではっきり聞き取れなかったけど。最後にアンダーワールドの「Rez」も回してたらしい。でもとりあえず大音量で曲がかかってさえいればもうどうでも良かった。それほどまでにナチュラルハイで気分が良かったのだ。

Q-HEYの終了間際、目の前にFLUKEのフロントの二人が姿をみせた。

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レイチェルは思ったよりも小さい。二人ともとても楽しそうに踊っているのが印象的だった。ステージでは次の天空オーケストラの人達が楽器の用意をしていて、ニコニコしながらこっちを見ていた。朝の光に包まれてなんかとてもあたたかい雰囲気だった。

 

天空オーケストラと祭りの終わり

天空オーケストラはシートに寝ころんで聴くことにした。昨日の夜の寒さがうそみたいに日差しが暖かい。そしていつの間にか眠ってしまった…

…暑さで目が覚めた。すでに日差しは炎天下。時計を見るともう午前8時。

すでにフェスティバルは終了していて、周辺では帰り支度が始まっていた。ボランティアの人達がそこら中に散らばったゴミを集めてくれている。僕らも周辺のゴミを片づけた。

30分ほどでゴミ拾い、帰り支度等が終了。重い体と荷物を引きずって、一晩過ごした会場をあとにする。駐車場へ向かう途中、振り返って昨日行ったゴンドラの山頂、メインステージを見ながら思った。「来年も、絶対ここに戻って来るぞ!」と。 

Summer of Rainbow’97

Summer of Rainbow’97

  • アーティスト: オムニバス,Solar Quest,Ochi Brothers,SOMETHING WONDERFUL,Mixmaster Morris vs Jonah Shar,Artman,Dub Squad,Hiroki Okano,Makyo,Haruomi Hosono
  • 出版社/メーカー: イーストウエスト・ジャパン
  • 発売日: 1997/07/25
  • メディア: CD
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 2017年の視点から振り返る「RAINBOW2000 HAKUSAN’98」

テクノブームの真っ只中だった

このイベント開催から約20年が経ちました。

 98年当時はソニーミュージックが「ソニテク」と称しテクノ界隈の音楽を盛り上げていました。未だソニーミュージックのサーバに当時のコンテンツが残されています。

SONY TECHNO PAGE

Underworld、Orbital、Prodizy、The Chemical Brothersをまとめて「テクノ四天王」と呼び始めたのもこの時期。今も昔もこの辺のアーティストを「テクノ」と呼んでしまうと、ジャンル分け警察がやってきてひと悶着ありそうですが。

当時は「デジタルロック」「デジロック」なんてジャンル分けもありましたね。なんだかんだでこの四天王はこの後20年近くトップアーティストであり続け、未だバリバリの現役です。この間、Orbitalは何度か解散を繰り返してきましたが、2017年初頭にしれっと復活しています。

今後、Orbitalの解散は宮崎駿の引退宣言と同じものと思うことにしましょう。

消えたアーティスト「Fluke」

この年のRAINBOW2000に出演していたほとんどのアーティストもまだまだ最前線にいる人たちばかり。でも残念ながらFlukeは音沙汰無し。ジャケットが超ださいこのアルバム「Puppy」を2003年に出してから音源が出ていません。  

Puppy

Puppy

 

これ以前まではデザイナーズリパブリックのアートワークが採用されていて、当時の「テクノ感」をビジュアルで体現してたんですが…何このおばあちゃんが手芸で作ったような犬?

当時も人気や知名度があったかというと正直微妙なところでしたが、個人的には「デジタルロック」という言葉を体現しているような曲が大好きでした。 いろいろな映画のサントラにflukeの曲が使われてたし、マトリックスの劇中でもザイオンの住民が踊る印象的なシーンでFlukeの曲が使われていました。

先ほど書いたように、中期にリリースされたアルバムやシングルはデザイナーズリパブリックがデザインを手掛けており、それも大好きでした。 

このPVもデザイナーズリパブリックが手掛けたやつじゃなかったかな?ワイプアウトっていう3Dレースゲームに関連したビジュアル。

www.youtube.com

今見ると古さも感じるけど当時は最先端で、これぞ「テクノ」ってビジュアルだと思ってた。

ザ・デザイナーズ・リパブリック (世界のグラフィックデザインシリーズ)

ザ・デザイナーズ・リパブリック (世界のグラフィックデザインシリーズ)

 

なおFlukeの曲を手っ取り早く聴くにはこのベストアルバムがおすすめです。

Progressive History X

Progressive History X

 

Underworldの「Rez」にそっくりな初期曲「Groovy Feeling」も入ってますw 

2017年に復活を果たした「DUB SQUAD」

このイベントで初めてライブを観てすっかりはまってしまったのがDUB SQUAD。ながらく活動していなかったのですが2017年に久々のライブが行われてアルバムも発売されるそうです。

当時は発売されたばかりのこのアルバムを聴いて予習してからライブに臨んだんですが、ライブはアルバムをはるかに超える衝撃でした。かっこいい音楽とはこういう音楽だと。

Enemy Or Friend

Enemy Or Friend

 

今思えばわりと普通なことだし当時もそうだったと思うのですが、こういうエレクトリックミュージックの中にガツーンとギターの音が入ってくるのが新鮮でしたね。

翌年のRAINBOW’99にも出演していましたが、個人的にはメインアクトと定めて観てましたね。その後、益子さんが参加するROVOを聴くようになりたびたびライブに足を運んだのも自然な流れです。

 RAINBOW以外でDUB SQUADのライブを観たのは残念ながら2回ほど。

ひとつはたしか益子さんがミックスで携わっていた関係でやったと思われるLABCRYのレコ発ライブのゲストとして。

もうひとつは大阪市立大学の学園祭での野外ライブ。銀杏ロックフェスと称したイベントのトリでした。悪天候の中ギリギリまで演奏されるかどうか決まらなかったのを覚えています。時間の都合で短いライブだったけど楽しかったなあ。

WALRUSのこと

 DUB SQUADはスーパーカーのAOHARU YOUTHとか他アーティストのリミックスも何曲かありますが、いちばん好きなのはWALRUSの「空の心」のリミックス。

WALRUS MOTH

WALRUS MOTH

 

WALRUSは実力もポテンシャルもあったのになぜか人気が出ず、あまり売れないまま解散しちゃったなあ。 なんかのきっかけがあれば大ブレイクすると思ってたのに。 

ブンブンサテライツのアルバムにゲストで参加したりして、ブレイクする土壌はあったと思うんだけど。