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謎の看板「宇宙平和音頭」の謎に迫る!

街ネタ

兵庫県の川西市、伊丹市。大阪府の池田市、箕面市、豊中市。

その地域にお住まいの方は見たことがあるのではないでしょうか?「宇宙平和音頭」「みんなにあえてあ~うれし!」「宇宙人もおり!嘘・駆け引きない新しい文明にかえよう」「よろこびわかつ 悦二」。このような意味不明のメッセージが書かれた謎の看板を。

いったい誰が何のためにあのような看板を設置しているのか?その謎に迫ります。

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増殖と更新を続ける謎の看板群

2000年前後から川西市近辺で見かけるように

私は大阪府民ですが、自転車をこいで橋を渡れば10分ほどで兵庫県の川西市にたどり着く地域に住んでいます。川西は私の地元よりもホームセンターや飲食店が充実していたので、大きな青い橋の側道を自転車で渡ってたびたび川西に足を運んでいました。

自分が記憶する限り2000年前後からでしょうか?その道すがら「宇宙平和音頭」と書かれた意味不明な看板を目にするようになりました。気に留めなかっただけでもっと前からあったのかもしれないですが、強烈に印象に残るビジュアルと内容の意味不明さに薄気味悪さを感じていました。

あるときは駐車場の柵。

またあるときは倉庫の壁面。

不規則にあらゆる場所へ貼り出されており、年々着実に掲示箇所が増えていく。しかも時間を置いてまた訪れると看板の内容が更新されている場合がある。貼りだしたまま放置されているというわけではなさそう。それなりに管理が行われている様子が伝わってきます。

キーワードとなる言葉は”宇宙平和音頭”という文字列。以降はこの看板群の呼び名を「宇宙平和音頭」とします。

「宇宙平和音頭」はどんな看板なのか?

基本デザインは富士山とUFOのイラスト

富士山と太陽、そしていわゆる円盤型のUFOとそこから放出される謎の粒子。最も多く見られる宇宙平和音頭のデザインは、これらの要素が組み合わされています。

宇宙平和音頭の看板
宇宙平和音頭の看板基本形

そして例の「宇宙平和音頭」というキーワード。付属する情報としてColumbia Music Entertainmentという文字列とロゴ、さらに「宇宙より みんなの心に みんなであえたらあ~うれし!」という謎のメッセージ。そして企業名らしきものと、その連絡先と思われる電話番号。

このデザインの看板は、一箇所に同じものが複数掲示されているケースが多い。たとえばこんな風に。

宇宙平和音頭の看板
複数枚はられているパターンも多い

また、UFOから放出される粒子がラメっぽい素材でデコられているケースもあります。

宇宙平和音頭の看板
看板がデコられているパターンもある

メッセージのみの看板が付随する場合も

この看板が増え始めた当初は無かった、あるいは私が気づかなかっただけかもしれないですが、基本の看板と並べてメッセージのみの看板が付随するパターンも見かけるように。

「宇宙人もおり!嘘★駆け引きない新しい文明にかえよう」というメッセージ。そして最後におそらく人名とおぼしき漢字二文字。これに油性ペンで書いたと思われる手書きのメッセージが追加されているものも。

宇宙平和音頭の看板
メッセージのみのシンプルな看板もある

なおこの写真の看板は、上で挙げたUFOがデザインされた看板と同じ並びに掲示されていました。

2枚の看板をよく見比べてください。

UFOの看板が経年劣化して色あせているのに対し、メッセージの看板は比較的最近設置されたことがお分かりいただけると思います。

以上の看板は2015年時点のもの。

2024年の最新バージョン

年を追うごとにデザインもメッセージも微妙に変化してきています。そして2024年になった今もなおアップデートされ続けています。

こちらは2024年3月に川西で発見したもの。従来のものから会社情報や宇宙関連のキーワードが消えて、より抽象的になりました。

貼りっ放しで放置されているわけではなくしっかり管理されている。誰かが確実に保守管理しているのです。

誰かが…誰だ?

川西市を中心に阪神間 北摂地域に点在している

阪神間に点在していると書きましたが、ストリートビューで追える範囲で挙げていきたいと思います。2015年8月時点での情報なので、ストリートビューが更新されれば消えてしまっている可能性があることはご承知ください。

川西市にある宇宙平和音頭

川西市の南東部にある久代周辺は特に多くみられます。

川西市外の宇宙平和音頭

川西市以外にも目撃例が。自分は未見ですが、中でも豊中市の浜交差点近くにある物件はかなり強烈なようで頻繁にアップデートが行われている様子がうかがえます。

他にもあるらしい

twitterやブログ、その他ネット上で探し得る情報を確認する限り、箕面などその他の地域にもあるらしい。よってここに挙げた例はほんの一部に過ぎないと思われます。

何のために看板を設置しているのか?

一旦、今ある情報でこの看板の設置目的を推測してみましょう。

「宇宙平和音頭」という曲の宣伝?

宇宙平和音頭という曲があり、それがコロムビアから発売されていている。これはその宣伝である。

看板を見ればまずそう考えるのが妥当だと思います。でもネットで調べる限り宇宙平和音頭という曲がコロムビアから発売されているという事実は見つかりません。

やはり私と同じように看板が気になって調べた方々がネット上におられるようで、皆さん同じようにひとつの情報に辿り着いています。

「宇宙平和音頭」と検索すると、劇団鹿殺しというグループが出しているアルバムに「宇宙平和音頭」という曲が収録されているという情報が見つかります。

しかし時系列的にこちらのアルバムは看板の発生時期よりずっと後に発表されているみたい。発表より先に生まれていた曲だとしても、ウェブサイトで劇団の情報を見る限りはあの看板のテイストと表現のベクトルが異なります。よって同名の異なる曲と考えるのが妥当です。

どうやら劇団の公式twitterアカウントで否定されているっぽいですね。

じゃあ宇宙平和音頭とは何なのか?

申し訳ないがこれは現時点で分からずじまい。曲があるんだとしたら一度聴いてみたいものです。

電波系看板なのか?

例えば政権や行政に対する憤りだったり、自分はなんらかの組織に狙われているという内容だったり。そういったことがびっしりと細かい字で書きこまれている看板を見たことがありませんか?

電波系看板という言葉が適切か分かりませんが、あなたの街にも一箇所か二箇所ぐらいあるはず。

でも電波系看板ってもっとエリア的に小規模なことが多い。自分の敷地に隙間なくビッシリ張ってあったり。特徴としては赤い文字がギッシリだったり。もっと攻撃的だったり。こんな感じで。

宇宙平和音頭は掲示されている範囲がとても広く、攻撃性や怒りも感じません。

あやしい新興宗教なのか?

ある世代には「意味不明なメッセージ=新興宗教=危険」という認識があると思います。

90年代からしばらくは、オウム、ライフスペース(シャクティパット、定説です)など、新興宗教が起こした事件や騒動がたびたびメディアに取り上げられていたので。

これらはいずれもルーツにキリスト教や仏教などの宗教があって、その宗教団体が出す看板やチラシなどにもそれを匂わせる雰囲気があります。

でも宇宙平和音頭にはそいういった既存の宗教を匂わすニュアンスが感じられない。あえて分類するならニューエイジ的な思想。

企業の広告なのか?

ストリートビューの画像を見ると、企業名らしき文字が入っているタイプの看板が散見されます。建設、不動産関連の企業っぽく、富士山のモチーフも企業名からきていることが分かります。

ということは企業の広告?それはそれで正解なのかもしれませんが、これを見てアプローチするかというと…やっぱり躊躇しますよね。

個人的なメッセージなのか?

推察するに、この看板は個人的な思想やメッセージを広く発信するために設置しているというのが主たる目的でではないかと。

おそらくは看板に書かれている企業の代表的な立場の人が道楽的な感じでやっているのではないか。代表じゃないと会社名とあのメッセージを併記できないでしょう。

これだけ大規模かつ色々な場所に設置できているのだから、それなりの財力があるはずです。また人脈や信用力もある人物に違いありません。

キーワードを元に設置した人物を探る

あっけなく辿り着いた

埒が明かないのでメッセージタイプの看板にあった名前と企業名で検索をしてみました。すると宅建協会のウェブサイトがヒットします。そこにあった会員の名前と企業名が看板と一致します。

そこに明記されていた会社所在地を検索してストリートビューで周囲を確認すると…

あった!

本社所在地住所の建物に例の看板が。やはりこの企業の代表が宇宙平和音頭の設置主と考えて間違いないでしょう。

既にテレビに出てたらしい

さらに宅建協会のサイトにあったフルネームで検索。するとテレビ番組の情報がヒット。それによると2012年によ~いドン!のとなりの人間国宝さんのコーナーに出演されていたようです。そこにはこう書かれていました。

円はUFOを目撃したという一級建築士の○○○○(※一応伏せときます)さんに出会った。○○さんは30年間に12回、未確認飛行物体を目撃したという。

http://tvtopic.goo.ne.jp/kansai/program/ktv/25483/149105/

「となりの人間国宝さん」は関西ローカル番組の一コーナーで、関西の町を円広志や月亭八光がぶらり歩きして、いきあたりばったり風に人と触れ合うコーナー。そのコーナーで伊丹の北部に訪れた際に取材されたようです。北伊丹と川西の久代は隣接しています。やはりあの辺が宇宙平和音頭の本拠地なのか。

なんとなく人物像が見えてきました。UFOを目撃したことで人生観が変わってしまったタイプの人かな。オカルト界隈ではよく聞く話ですね。

え?聞いたことない?

突然ですが調査はこれまで!

とりあえずスッキリした

唐突ですが調査はここまでといたします。

闇の真相にたどり着いたとか、アンタッチャブルな領域に踏み込んでしまったとか、そういうわけではありません。むしろ、当初感じていた薄気味悪さはすっかり拭えました。

想像やネット上の情報だけでこれ以上個人のことを詮索すべきではない。そう考えた結果です。

アブナイ人物ではないと思う

得体の知れない新興宗教が発信しているものだったらどうしようかと思いましたが、それなら記事にしていません。

これはアレだ、バイタリティと資金力のあるおもしろおじさんの暴走に違いない。害はない。たぶん。

調査するうち、私と同じく興味をもって看板に書かれた電話番号に電話をかけた人のブログを見つけました。実際に設置主と話をした様子がつづられています。その内容によると、おおよそ私の想像と一致する人物のようでした。

設置主との邂逅

Twitterで検索すると、設置主と偶然出会い本人や車の写真を撮らせてもらっている方も発見しました。

車は看板と同じテイストでデコられているものの明らかに高級車。

たぶんクライスラーの300Cで中古でも500万ぐらいで流通してるやつ。やっぱり金持ちだ。ちらっと写っている設置主も奇抜な感じではなく普通のおじいさんという雰囲気です。

上のツイートの2年後、さらなる目撃情報も。

なんか着実にアップデートされてないか?看板と同じように。

やっぱりどう考えても資金に余裕がある人の行動だ。白い軽トラをデコった、歯がボロボロのじいさんだったら「あーはいはい、そっち系ですね」と思いますが、そういう感じじゃないですね。

この記事をきれいに完結させるなら私もコンタクトを試みるべきでしょうが、あいにくそんな行動力や義務はありません。おそらく物凄い熱量で宇宙人のことを語ってくれるんじゃないかと思います。聞いてみたいけど…メンドクサイやん。誰か一緒に行ってくれるなら聞いてみたいけど。

追記(2016/04):
ある日、中国道と併走する猪名川大橋の一般道を池田方面に向けて車を走らせている際、バックミラーに写る車に違和感。あ!?あれは!あれだ!先のTwitterで見た黒のクライスラーだ!ちょうど下道に降りるタイミングだったので追いかけられず横目で見送る。間違いない。

さらに後日、仕事帰りに空き物件の横を通り過ぎようとすると視界の端に違和感。あ!?あれは!あれだ!アレの新しいデザインのアレだ!ついにわが町にも進出してきた。メッセージのみでさらに抽象的な内容なっているが例の名前が書いてある。予備知識が無ければ不気味にしか思えないだろうな。

宇宙平和音頭の看板
2010年代以降主流になったデザイン

いや、不気味には違いないんだけども。

ついに全国放送にとりあげられてしまった

どうやら、2020年の3月8日に放送されたナニコレ珍百景にこの看板の件がとりあげられ、いわゆる「珍百景登録」をされてしまったらしい。残念ながら私は見逃しました。

消える可能性もあるので上記URLから一部引用させていただく。

黒川地区のバイパス道路沿いに「宇宙人もおり嘘・駆け引きないなかよし文明にいきたい。」という謎のメッセージが書かれた巨大看板がある。これまで何度もUFOに遭遇したという不動産会社社長の福山悦二さん(72歳)が、ウソのない世界こそが人間も宇宙人も仲の良い明るい未来につながるという気持ちを込め、貸し看板の場所に依頼して看板を設置したという。

ああ、とうとう世に出てしまった。広く人の知るところとなってしまった。

なんだろう、このちょっと残念な気持ちは。人気のないインディーズバンドを初期から応援してきたけど、メジャーデビューしてしまい何故か残念みたいなこの気持ちは。

なんにしろコンプライアンスの厳しい今どきのテレビで取り上げられたのだから、危険人物ではなかったのがお分かりいただけたのではないかと思います。

ラジオ関西の記事に取り上げられた

2021年にはラジオ関西の記事でもとりあげられて、ご本人と例のデコ車の写真、そして今に至る経緯がまとめられていました。

「宇宙人はいる」「私はUFOの宣伝マン」 一級建築士が「キラキラのクライスラー」に乗る理由
先日、アメリカの軍関係者がUFO(未確認飛行物体)を見たという情報が相次ぎ、連邦議会が国防総省に報告を要請したというニュースがありました。

ああ、やっぱり身なりがちゃんとした老紳士じゃないか。まだ情報がすくない時点からしていた自分の読みは外れていなかった。狂人には違いないかもしれないけど、ちゃんと話は通じそうだ。

UFOと宇宙人は男のロマン

この手のオッチャン、よくいるじゃないですか。

もう亡くなってしまわれましたが、中崎町商店街にあった宇宙家族のオーナーとか。楊貴妃が使ったレンゲとかを売ってた清荒神の骨董屋のじいさんとか。

宇宙平和音頭の設置主を含め、彼らが本当にUFOを見たり宇宙人に会ったり、あるいは自分が宇宙人だと信じたりしているかは分かりません。自分にとってそれはどうでもよく、エンターテイメントとして遠くから楽しんでいます。あくまで遠くから。

もしかしたら彼らの行動はサービス精神が旺盛すぎるゆえ、人を楽しませたいがゆえの行動かもしれません。誰も不幸にしてないじゃないか。インチキ霊能者みたいな金の匂いもしない。まあ、正直自分の身近にいたら面倒くさいし嫌ですが。

ちなみに私自身は広い宇宙のどこかに必ず宇宙人が存在していると本気で思っているタイプの人です。宇宙人がUFOに乗って地球に来ているかどうかは別として。

例えば妖怪も同様です。姿が見えるとか見えないとかそんなことはどうでもよくて「そこにいるような気がする」と感じれば、もはやそれは存在しているも同じ。釣りだって見えない魚を狙うことがあるじゃないか。そこにいるはずと信じて仕掛けやルアーを投げるのだ。

私たちは普段から目に見えない愛情や憎悪に振り回されて生きてるじゃないですか。それは目に見えるものよりよっぽど綺麗だったり醜かったりする。大差ない。